英語が本当に苦手な人の英語学習法

製作: 小川 邦久

ご意見・ご感想

プライバシーポリシー

Copyright (C) 2009 KUNISAN.JP.
All Rights Reserved.



5.本格的に英語学習再開、NOVAに通学


 ロサンゼルスの一人旅で、「人あっての英語」ということを痛感した私は、英会話教室に通うことに決めます。現実のコミュニケーションでは、文章の丸暗記は全くと言っていいほど役に立たず、キャッチボールで相手がグローブを構えている方向にボールを投げるように、その場その場の状況でアドリブ的に適切な言葉を返せないといけないと思うようになりました。その上で「外国人と接する際のオドオド感を消すには、外国人と何回も接するしかない」とも感じて、英会話教室は講師が外国人のところを最優先に考えました。その中で料金的にリーズナブルで、TVコマーシャルでも馴染みのあったNOVAがいいということになり、最寄の三鷹駅の隣にあるNOVA吉祥寺校で申し込みをすることにしました。


 まず、NOVA吉祥寺校に電話で「見学したい」旨を伝え、それから吉祥寺校の校舎に向かいます。そこで、ネイティブ講師との面接テストがありました。ここで英語のレベルをチェックされます。NOVAのレベルは上級~中級がレベル1~6の6段階に分かれていて、その下に7A、7B、7Cという初級~初心者の3段階のレベルがあります。私は下から2番目の7Bという結果でした。1レッスンの時間は45~50分で、合計110レッスン分を申し込みました。ネイティブ講師一人と生徒複数でフリーな話題で会話できるVOICEルームも、30回分のチケットを購入しました。



 今現在の新生NOVAについては詳細が分かりませんが、2007年に破綻する前の旧NOVAについては、お世辞にも世間からの評判はあまりいいものとは言えませんでした。「講師の質が悪い」とか、「レッスンを何回受けても英語力が上がらない」とか、「あんなところ行くだけ金の無駄」とか、そういった類のものです。(後年は「予約が取れない」という、恐らく受講者に比べて講師の数が不足していることから来る悪評も出てきましたが、私がNOVAに行ってた頃には、希望の時間に予約が取れないようなことは、あまりありませんでした。)


 ただ、私がNOVAに通っていた頃の吉祥寺校や、その後移籍した立川校では、講師の教え方は皆親切丁寧で、私としてはかなり好印象でした。もしかしたら私の行っていた校舎や講師がたまたま当たりだったのかもしれません。それでも一つ言えるのは、「英会話学校に行けば、英語が話せるようになる」というのは、ほとんどの場合「正しくない」ということです。英会話学校はあくまで「仮実践の場」として捉えて、それに付随する英語の学習は自分なりにすすめないと、ちゃんとした効果が現れません。


 私はNOVAに合計10カ月通っていました。その間、自宅でもNHKのラジオ英会話のカセットテープを毎日繰り返し聴きながらリスニング力の向上を図ったり、基礎英文法の本で勉強もしたりしていました。それを一日最低でも1~2時間、毎日続けていました。そうしているうちに、講師が何を言っているのかだんだんとわかるようになり、こちらも伝えたいことを文章として発言できるようにもなってきました。私にとってはNOVAに通った経験が無ければ、自宅で勉強したことが本当に使えるものなのか実感として判断できず、自信を持って会話することはできなかったと思いますし、逆にNOVAに通うだけで自宅での勉強を一切やらなかったとしたら、レッスンで習った分だけの薄っぺらな会話しかできず、きちんとした会話のキャッチボールはできないままだったと思います。


 あと、本来NOVAの社則か何かで禁止されている行為だとは思いますが、当時の立川校では講師と生徒の仲が良く、一日のレッスンが終わった後に一緒に居酒屋に出かけたり、週末にドライブ旅行に出かけたりもしました。そこでの英会話は、教室の中の限定された枠内のものではなく、自由で、場合によっては少し汚い表現も出てくるような生の英語でした。そういった英語に英会話教室に通いながら触れられたという点でも、私はラッキーだったように思います。


 ただ、そのような自由時間の英語を除くと、NOVAに通った10カ月間の最後の方は、教室での英語学習に限界を感じるようにもなりました。自分が本当に話したい、あるトピックに少し深く突っ込んだ内容についての会話ができないことに、少しずつ不満を感じるようにもなりました。例えば私の大学の専攻は工業化学でしたが、英語で化学系の話題を話したいと思っても、講師には化学の知識がない場合がほとんどで、しかも仮にそれができたとしても、他の生徒がいる場合には化学を話題にした会話でレッスンを独占するわけにもいきません。もちろん化学に限らず、法律、政治、スポーツ、作曲、映画の撮影など、どの分野でも専門的になればなるほど、英会話教室で効果的に学習することは期待できなくなります。


 他人とコミュニケーションをより深く円滑にするには、自分の本当に話したい事を話せるようにしておくことが重要です。英会話教室は、英会話の基礎を学ぶにはそれなりの効果を得ることができる場ではありますが、より深い話題まで展開しようと思うとなかなか難しいのが現実です。


 持論ではありますが、英会話教室で「英語を学べる」と言えるのは初級者からせいぜい中級者までで、それ以上のレベルの人は英語で専門的な文章を読むなどして知識や単語力を増やしたり、仕事やインターネット上のコミュニティなどで実践の場を何回も積んでいく方が、さらなる英語力向上につながると思います。実際の仕事の場においては、完璧な発音や文法力よりも、専門的な単語を一つ言うだけの方が相手に通じる場合が少なからずあります。


 いくら英会話がネイティブ並みに完璧だったとしても、それに付随する何らかの知識や経験がないと、ただの「英語屋さん」になってしまいます。完璧な日本語ができても、何の趣味も経験も話題もない人がどれだけ会話を弾ませることができるかを想像すると、どのようなことなのか理解しやすいと思います。