ナンセンスな物語(17)-穴掘り

 「それ、始めろ!」とリーダーが叫ぶと、130万人もの男たちが一斉にシャベルで穴を掘りはじめた。

 しかし、30分ほど経って様子がおかしくなった。何かが間違っている。リーダーは「1人あたり1メートル掘るとして、130万人いればすぐに地球の裏側まで掘れるはずだったのだが」と言った。しかし、現実はそうでなかった。130万人の男たちも、疑問を感じ始めていた。

 すると、サブリーダーが「計算が間違っていたようです。地球の直径は約1万3千キロメートルなので、つまり1千3百万メートル。10倍の1300万人いないとこの仕事は成り立ちません」と言った。リーダーはがっかりしたが、素直に間違いを130万人の男たちにも伝えた。皆同様にがっかりして、しゃがみこんでしまった。

 しかし、リーダーはすくっと立ち上がった。「130万人が10人分の時間をかければ、1300万人分の仕事量と同じになるじゃないか!時間はかかるが不可能ではない!」と叫んだ。すると130万人の男たちは一斉に立ち上がり、「そうだ、俺たちにもできる!」と叫びながら再び穴を掘りはじめた。彼らは同じ夢に向かって穴を掘り続ける。

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