ナンセンスな物語(15)-ある優秀な営業部員

 殺人事件現場に今日も現れた。人呼んでザ・ハンター。血の臭いのする事件現場には、必ず出没すると言われている。ザ・ハンターは黒いジャンパーの内ポケットから携帯を取り出し、携帯カメラで事件現場を10枚ほど撮影した。

 ザ・ハンターは築21年の木造アパートの2階で一人暮らしをしている。事件現場から戻ってきたザ・ハンターは、鉄製の階段を駆けのぼり、203号室のドアの鍵を素早く開けて、部屋の中へと入っていった。今日も証拠をつかんできたぞ、とザ・ハンターは自信ありげに叫んだ。

 ザ・ハンターは食肉加工会社の営業部員。狙った顧客は逃がさない。スーパーマーケット、レストランから小さな焼肉店まで、ライバル会社を一網打尽にしてしまう。チェーン店ならなおさらだ。

 ザ・ハンターの趣味は競馬。狙った情報は逃さない。血統、実績、脚質から馬場状態まで、一つの漏れさえ許さない。予想が外れたって顔色一つ変えない。それが、ザ・ハンター。

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