ナンセンスな物語(8)-プロ野球

 ピッチャーの中田とキャッチャーの田中がサイン交換をする。次の球は豪快なスローボールだ。どんな優秀なバッターだって、このボールをヒットすることはできない。しかもバッターは田中田(たなかでん)だからなおさらだ。

 中田の手からボールが離れた瞬間、誰もがその目を疑った。彼は指名手配犯だったのだ。中田は疑いを晴らすことが一切できず、そのまま警察に連行されてしまった。

 キャッチャーの田中とバッターの田中田は、気にせず野球に没頭することにした。ピッチャーは他にいくらでもいる。中田の存在価値なんて大したことない。そう思うと、2人の気分はやたら爽快になった。

 それから球場に来ていた5万の大観衆は、勇気ある2人に惜しみない拍手を送った。

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