タスマニアへの道標

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製作: 小川 邦久

ジョンとジルのB&B


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- 2002年5月1日 セントへレンズにて -
 セントへレンズ市内の某4つ星人気B&Bの隣に、小奇麗なB&Bを発見しました。このB&Bは新しく営業を始めたばかりなのか、手持ちのガイドブックや旅行情報誌に詳しい情報がありませんでした。「情報はないけど、外観はこっちの方がいい」ということで、思いつくまま小奇麗なB&Bの方に宿泊することにしました。
 このB&Bのオーナーはジョンとジルという夫妻で、昨年末にクイーンズランドからセントへレンズに移り住み、100年以上前に建てられた古い家を改築して宿泊できるようにしたとのことです。まず、ジョンに建物内を案内してもらいましたが、一部改築が完了していない部屋はあったものの、宿泊する部屋は外観同様に清潔で申し分のない内容でした。建物内は24時間常に暖炉で暖められていて、肌寒さは全く感じませんでした。ジルは東京オリンピックの年に東京に滞在したことがあるとのことでした。ジルとは当時宿泊したホテルや銀座の賑わいなどの話をしましたが、40年近く前のことをよく覚えていて感心してしまいました。
 その後、ジョンに町で一番のシーフードレストランまで車で送ってもらいました。このレストランは船を改装したもので、10数席程度の小規模なものでしたが、開店時間は6時15分で、まだ2時間近く時間がありました。再びB&Bに戻って、ジョンにレストランの予約を入れてもらいましたが、この日はすでに10人程度の予約が入っており、準備に時間がかかるということで、7時15分から予約を入れました。その時間に合わせてタクシーも手配してもらいました。
 ジョンは非常に気前がよく、レストランの予約の後「セントへレンズではカキはただみたいなものだ。海に行けばどこにでもある。レストランに行くまでの時間にカキ料理をご馳走しよう」ということになりました。その場にジルも居合わせていたのですが、ジョンがあまりに気前がよすぎるので、ちょっと不機嫌な顔をしていました。案の定、私たちが部屋に入ると、ジョンとジルがダイニングで口論しているのが聞こえてきました。私たちとしてはジョンの好意はすごくありがたいのですが、確かにジルの気持ちもよくわかります。何でもタダでやってしまったら商売が成り立ちません。
 しばらくしたらジョンが部屋にやってきて、私にカキ料理を教えると言いました。もともとの「カキ料理をご馳走する」から「料理を教える」としたことで、ジルも機嫌を戻したのかもしれません。ジョンは大きな麻袋からカキを12個出して、まな板に置きました。さらに「こうやって中身を取り出すんだ」と、ナイフ片手に殻の開け方を教えてくれました。私は左利きの上に不器用なため、なかなか同じように殻を開けられませんでしたが、なんとか1つ殻を開けると、またジョンが調子よく「日本のキングだ!」と煽ててくれました。ジョンが冷蔵庫からビールを1本取り出し、「ビールを飲もう!」と言ってくれたのですが、嬉しさよりもまずジルの顔色を伺ってしまいました。その時はジルもニコニコしていたので、ちょっと安心してビールを飲みました。
 それからジョンとジルに私たちがホバートで結婚式を挙げたばかりだと伝えると、ジルはまるで我が子のように喜んでくれて、「お祝いのシャンパンを買わないと!」と、妻を連れて近所の酒屋に出かけてしまいました。ジョンは「新婚さんがうちに来てくれて、ジルも相当嬉しかったんだと思うよ」と言っていました。こちらもジルの機嫌が取れてなんだかホッとしてしまいました。
 カキ料理を平らげた後、そろそろレストランに向かう時間になったのですが、タクシーが迎えに来ませんでした。ジョンは「時間通りにくると言っていたからそろそろ来る。心配いらないよ」と言っていましたが、レストランの予約の時間を過ぎても向かえに来ませんでした。ジョンはまだ「心配いらないよ」と言っていましたが、ジルの機嫌がだんだん悪くなっているのが目に見えてわかりました。それからジョンは外に出てしばらく様子を見ていましたが、見かねたジルはタクシー会社に電話をして、結局20分遅れでタクシーが迎えに来ました。タクシーの運転手は「7時10分に迎えに行くことになってて、約束の通り庭のところまで行ったんだけど、ライトをパッシングしても誰も出てこなかったから帰っちゃったよ」と言っていました。レストランでジルと妻が買ってきたシャンパンを飲みながら、「きっと今ごろジョンとジルは口論してるよ・・・」と想像してしまいました。
 翌朝も朝食後にジョンの案内で近所のビーチに行くといくことになったのですが、予定の時間を大幅にオーバーして、カキの養殖場、天然カキが取れる磯、昔のスズ鉱山まで案内してくれて、あっという間に昼前になってしまいました。ジョンのサービス精神は大変ありがたかったのですが、またジルの機嫌を損ねてはいけないと、感謝の意味でチェックアウト時に日本から持ってきていたとっくりをプレゼントしました。
 そんなジョンとジルのB&Bですが、近日中に改築を100%完了させて来シーズンの営業に備えるとのことです。タスマニアでも観光名所とは言えないセントへレンズですが、ジョンとジルのおかげで楽しいひと時を過ごすことができました。

< ジョン&ジルと >
また滞在したいB&Bです

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