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天然(自然)のセシウム(Cs)とストロンチウム(Sr)と合金と化合物

名前: 小川 邦久 リンク: http://kunisan.jp/ 日付: 2017年10月21日
天然(自然)のセシウム(Cs)とストロンチウム(Sr)セシウム(Cs)やストロンチウム(Sr)と聞くと、どうしても「放射性物質」のイメージがついて回ります。世の中にはセシウムやストロンチウムを使った合金や化合物の材料製品が存在しますが、たまに「放射線は大丈夫なのか」という質問があったりします。

結論から言うと、天然(自然)のセシウム、ストロンチウムは、いずれも放射線を出しません。さらには「合金や化合物はどうなのか」という人がいますが、合金や化合物を生成する際の(化学的)反応は原子核の変化を伴わないので、もともと放射線を出さない原子が合金や化合物に組み込まれたとしても、突然放射線を出すようになったりはしません。

原子の中心にある原子核は、陽子と中性子から構成されます。陽子の数が原子番号に対応し、同じ元素であれば陽子の数は同じになります(陽子の数=原子番号=元素の種類)。しかし、同じ元素でも中性子の数が異なることがあり、このようなものを「同位体」と言います。中性子の数は化学的な特性には影響ありませんが、「放射線を出すかどうか」に直接関係してきます。

天然にあるセシウムは陽子が55個、中性子が78個からなる「セシウム133」です。このセシウムは安定していて崩壊しないため、放射線を出すことはありません。

一方、核爆発や原発などの核分裂生成物として発生する「セシウム137(中性子82個)」は、半減期が約30年で放射線を出す同位体です。
※半減期: 存在する元素の半分が崩壊するのに要する時間。例えば1万個のセシウム137原子があるとすると、約30年後にセシウム137として残るのは半分の5千個で、残りの5千個は崩壊して別の元素になっています。原子核の崩壊は確率論的に発生し、その際に放射線を出します。

天然のストロンチウム(陽子38個、中性子50個の「ストロンチウム88」等)は安定していて崩壊しないため、放射線を出すことはありません。

ストロンチウムについても、核分裂生成物として発生する「ストロンチウム90(中性子52個)」は、半減期が約29年で放射線を出す同位体です。

他の元素について「天然なら大丈夫なのか」というと、もちろんそうではありません。よく知られたウラン、トリウムなどは天然でも放射性物質ですし、基本的に原子番号83番(ビスマス)以降の元素は、全て放射性物質になります。
※ただし天然のビスマス209の半減期は宇宙の年齢の9桁以上も長く、現実的には非放射性物質と考えて差し支えありません。

一般的な元素では、天然の炭素のうち炭素14(陽子6個+中性子8個)が放射性同位体として知られています。炭素14の存在量は極微量なので、もちろん健康に影響を与えるレベルではありませんが、半減期5730年という特性を活かし、化石の年代を調べる「放射性炭素年代測定法」に使用されています。言うまでもなく、炭素14は私達の体の中にも含まれていますが、仮に死んでミイラや化石になると、体内中の炭素14は半減期に従い長い年月をかけて徐々に減少していきます。

ちなみにヨウ素についても、天然のもの(ヨウ素127)は安定していて放射線を出しませんが、原発事故で問題になるヨウ素131は放射線を発生します。ヨウ素131の半減期は約8日と短く、特に事故発生直後の体内(特に甲状腺)への取り込みが問題になります。半減期(崩壊の早さ)の関係で、一時的にヨウ素131が大量に放出された場合でも、存在数は1ヶ月後に1/10未満、2ヶ月後に1/100未満、半年後には100万分の1未満に減少します。





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