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英語教育について雑記

名前: 小川 邦久 リンク: http://kunisan.jp/ 日付: 2017年6月10日
英語教育について雑記今から10年以上前の話ですが、私は「日本人の英語力は劇的に向上していく」と予想していました。インターネットの普及、洋画DVDで日英の字幕機能、ニンテンドーDSの英語学習ゲームなど、英語を学習するのに便利かつ楽しみながら学べる環境がどんどん整っていったからです。YouTubeでも海外の動画を無料で見られますし、Skypeで格安の英語レッスンも受けられますし、発音、文法、間違いやすい表現等、インターネットで簡単に検索もできます。ただ、学校での英語教育があまり変わっていないせいもあってか、残念ながら現状と自分が考えていた「劇的に向上」というレベルとでは、かなりかけ離れてしまっています。

今も昔も英語でコミュニケーションを取れるような人は、学校での授業や受験勉強の他に自分なりに英語を勉強している人がほとんどです。そういった意味でも、学校での英語の授業だけでは「コミュニケーションツールとしての英語」が学べないと言われてしまうのは仕方ありません。最近はどうなのかわかりませんが、英文を文末から翻訳させたり(いわゆる翻訳癖)、変な発音を聞かされたり言わされたり(カタカナ発音癖)など、悪い癖を擦り込まれたりすると、「コミュニケーションツールとしての英語」を学ぶ上で大きな障害となり、これを取り除くのに大変な手間がかかります。

先日、「2020年度の大学入試でセンター試験が廃止され、英語は民間試験を活用して、4技能(読む・聞く・話す・書く)を評価する形になる」という報道がありました。グローバル化が進む中、学校の英語の授業でもコミュニケーション能力を重視する方向で舵を切ることになったようです。テストを変えただけでどうなのか、という意見もありますが、今までの中高の英語教育が事実上「大学入試のため」ということを中心に行われてきたことと、それだけでは英語でコミュニケーションができる人を何十年もの間ほとんど輩出できなかった事を考えると、ゴールの方を抜本的に変えるというのはそれなりに効果があるのではないかと期待しています。中学校や高校の教師や教材の方が追いつかない可能性も出てきますが、これに向けてしっかりと勉強すれば、大学入試にもコミュニケーション能力にもプラスに働いてくるのではないでしょうか。英検やTOEFLなど外部の試験を使うというのも、テストに係る人的リソースが限られている中では、これでいいのではないかと思います。

肝心の学校の英語の授業の方は、教師のレベルアップの必要もあります。英語が「ある程度できる」というラインで「TOEIC730点」というのがありますが、中学の英語教師の約8割がこのレベルに達していないという報道もありました。まずは教える立場の人間としてはこれ位の点数はクリアしてほしいものです。今すぐでなくても、教師の方も勉強を続けてレベルアップをお願いしたいです(部活の顧問などもやらされて大変でしょうけど…)。TOEICで少なくともこの程度のスコアが取れないようだと、英語の基礎がしっかりと身に付いているとは言えず、間違った英語を教えてしまうリスクもあります。上記の通り、間違った英語教育のせいで変な癖が付くと、「コミュニケーションツールとしての英語」を学ぶ上で、かえって障害となってしまいます。
※「TOEICができても英語ができない人がいる」というのは確かにありますが、逆に大学卒業レベルの人で「英語ができてもTOEICができない」というのはまずありません。あるとすればその人が本気でテストを受けていないか、その人に対して「英語ができる」と評価している人の英語のレベルが低く、英語ができる・できないの評価が正当にできていないかのどちらかと思われます。あと「TOEICができても英語ができない人」でも、「TOEICも英語もできない」人より素地は間違いなくあるので、それなりの学び方をすれば「英語ができる人」になれる可能性は高いです。

「別に全員が英語を使うわけではないから、全員が全員英語を学ぶ必要はない」なんていう意見もあったりします。ただ、それを言ってしまうと数学や古文や世界史や、他の教科だって同じことになってしまいます。私は「小さい頃から英語を学ばせる」というやり方にはあまり賛同しないのですが、これは方法論もなく「若いうちに始めれば自動的に英語が身につく」というような、誤った認識に対してのスタンスになります。ただ、英語に限らずスポーツや音楽など何でもでもそうですが、年齢が若いうちから始める方が身につきやすいというのは間違いありません。「コミュニケーションツールとしての英語」を学べる環境が整っているのであれば、それを早いうちから使わない手は無いと思います。逆に現状の英語教育のやり方の延長で小学校低学年や幼稚園・保育園から始めても、結果は変わることは無いだろうと思います。

いずれにしても、英語を知っていると視野や世界が広がりますし、職業の選択の幅も広がります。生々しい話では、給料や昇給の面でも差も出てくるケースも多いです。日本国内でも外国人が増えているのと、少子高齢化で「日本だけで完結する」のが今後さらに難しくなっていくこともあり、これからも英語に触れる機会が高まることはあっても低くなることは考えづらいです。その中で「全員が英語を学ぶ必要はない」という考えからスタートしてしまうと、日本の国力を下げてしまうことにも繋がりかねないとさえ思っています。

あと、「将来的に翻訳や通訳は『AI』が行うので、英語の勉強は不要」という意見も散見しますが、これについても意見しておきます。従来の単語・熟語レベルの変換をベースとした翻訳サービスやソフトのアプローチとは根本的に違い、AIでは人々の実際のコミュニケーション(ビッグデータ)をベースに、ニュアンス的なところや意訳までもカバーできるようになるでしょうし、恐らく「この言葉にはこの説明を追加した方がいい」とか「人が感動する表現」とかを総合的に判断するような、非常に高いレベルの翻訳や通訳サービスが出てくることも想像できます。観光・交通・役所などのサービスをはじめ、映画やテレビ番組の翻訳・通訳や、仕事の上でも一般的な製品情報や契約文章などの翻訳は、下手に英語をできる人に任せるよりも、AIの翻訳・通訳サービスを使う方向に移行していくのかもしれません。

現状のネット翻訳サービスでも以前よりは大分精度が高くなりましたが、それでも相変わらず誤訳が多く、訳文が正しいのかどうかはチェックがどうしても必要になります。そのチェックにはある程度以上の英語のスキルが必要になるので、結局翻訳を依頼する人が英語力ゼロではチェックが不十分で危うい感じになってしまいます。日本の会社では今だに「英語はできるけど、商品やサービスの知識がない」「商品やサービスの知識はあるけど、英語ができない」という2つのグループに分かれてしまっているような話をよく聞きます。この人達同士でもうまくコミュニケーションが取れておらず、翻訳や通訳が不十分であることに互いに気づいていないというケースも多いようです。商品やサービスの知識を持った人が直接英語ができれば、こういったトラブルを根本から防ぐことができます。

それでも、将来的にはAI翻訳・通訳が色々な分野に入ってくる可能性は高いと思いますが、AIでの翻訳、通訳でも100%完璧という訳ではなく、エラーが完全にゼロになるということはありえません(人間が恣意的にエラーを発生させる可能性も含みます)。そういったエラーについて、例えば医療の最先端のような、人の命に係るような場面では誰が責任を取るのかという問題があります。また、AIの翻訳・通訳はネット上にあるサーバーにデータを与え、サーバー側での膨大なデータからの計算のもと、結果が帰ってくるような流れになりますが、先端材料や防衛に関する事など機密情報を含むような打ち合わせに、第三者に情報をあずける形になる翻訳サービスを入れていいのかというのもあります(実際にネット翻訳を禁止にしている会社もあります)。こういった場面では、基本的に担当者が直接英語でコミュニケーションする必要は残ります(しかも、高いレベルの英語能力が必要になります)。そもそも、命に関わったり、機密情報に関わったりしないような場面でも、海外とコンタクトや打ち合わせをする際にいちいち通訳や翻訳を介すのでは、その分余計に時間とコストがかかってしまいます。あと、バーでビールを飲みながら、スマートフォンやタブレットの通訳アプリを使って気心が知れるようになる…、というのもまず無いでしょう(100%無いとは言い切れませんが)。

まあ、AIの発展で仕事を奪われると言われているのは通訳業、翻訳業だけではなく、セールス、コールセンター、会計、運転手、銀行員など多岐に渡ります。「AIが発展するから英語教育はいらない」というのも、これを言ってしまうと英語以外でも「AIがあるからXXはいらない」と色々なことについて言えてしまいますし、将来的にAIがいつどの程度のレベルまで発展するのか、AIと人間とがどのように関係性を構築していくのかが分からないうちに、英語教育の要不要まで論じるのは「ちょっと飛びすぎている」という印象を持っています。

英語教育に持論がある人は非常に多く、それぞれが違った意見を持っているので、あまり色々な事を書くとそれだけ批判の対象にもなりかねませんが、とりあえず自分の経験をベースにバラバラと書くとこんな感じになります。もっと詳細まで書けば軽く本一冊分くらいの文量になりますが、ここでは「週末の独り言」ということでこの程度に留めておきます。





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