薄膜の構造と性質について説明※本資料は個人の学習用として制作されたものであって、内容の信憑性については保証しません。■ 膜の厚さ 塗装膜:0.001~0.1mmt 金箔:0.005~0.1mmt アルミ箔:0.001~0.1mmt めっき膜:0.001~0.01mmt(1~10μm) 精密めっき:0.0000001~0.01mm(0.1nm~10μm) 薄膜:0.0000001~0.01mm(0.1nm~10μm) ※薄膜と基板は「化学結合」であることが望まれる(共有結合、イオン結合、金属結合など)。 (ファンデルワールス力は物理結合) ■ 薄膜の成長 1)基板にぶつかる原子のうち、一部ははねかえってしまう。多くは基盤面やその近くにとどまる。 2)基板に定着した原子、または基板近くにある原子は、気体、または液体の状態でとどまる。 3)薄膜の厚さが5ナノメーター(原子の直径の約10倍)で点が現れる。 4)点と点がくっつきあうなど成長して、薄膜の厚さが8ナノメーターで島が現れる。 5)薄膜の厚さが11~15ナノメーターで島と島の間が海峡を残すような感じになる。 6)薄膜の厚さが19ナノメーターで、湖や穴を残すような感じになる。 7)薄膜の厚さが22ナノメータほどになると、原子が一面を覆いつくす形になる。 ※基板と膜の種類が同じ場合(金の上に金など)は、基板上に層を重ねるように成長することから、「単層成長」と呼ばれる。単結晶が多い。 ※成膜後は原子の格子欠陥が非常に多い状態(バルク材に比較して)。そのため、主に熱処理を行うなどして、格子欠陥を少なくすることが必要な場合がある。 ■ エピクタシー(平行成長、または方位配列) 成膜された物質の結晶が基板の結晶と同じ方位を向くような形での成膜方法。エピタクシーを行う条件は、 1)基板が単結晶であること 2)基板表面に不純物が付着していない 3)十分に高い温度 4)適切な真空条件(基本は高真空の方がいいが、金、銀、銅などは蒸着面にわずかな水が吸着していた方がいい結果が出るなど、例外はある) ※その他、蒸着速度を下げる(膜の成長速度の低下)、基板表面への電子線放射、薄膜材料原子のイオン化などが効果がある。 ■ 薄膜の電気的性質 金属の場合、電子の平均自由工程(λe)数十ナノメートル。 ・膜厚が電子の平均自由工程よりも小さい場合(10ナノメートルなど)は、電子は島伝いに飛び飛びに流れるため、電気抵抗が高くなってしまう。 ・膜厚が電子の平均自由工程よりも大きい場合は、電気抵抗が低くなる。ある程度(50ナノメートルなど)以上は膜厚を上げても抵抗は低くならない。 ・薄膜の電気伝導はバルクよりも良くなることはない。バルクよりも密度が低く内部欠陥が多いため。 ・スパッタの方が蒸着よりも一般的に電気抵抗が小さい。スパッタの方が初期の核密度が大きいため。 ・バルクの金属は温度が高くなると抵抗が高くなるが、非常に薄い薄膜の場合には温度が高い方が抵抗が低い。温度が高い方が化学的に活性で、亜酸化などの反応で、半導体に近い性質を示すためと考えられている。島と島を電子が飛ぶにはより活性な方がいい。 ・抵抗温度係数(TRC=温度変化あたりの抵抗値の違い)は膜の厚さによって大きく変化する。薄膜の基本は抵抗温度係数ゼロを目指すこと。 ・薄膜が薄ければ薄いほど、温度によっての構造の変化が激しい。これに対応してTRCや密度も大きく変化する。安定したデバイスを作成するため、エージングと呼ぶ高温&長時間の熱処理が必要。 ・エージング(数百度、数日間などの熱処理)によって、密度、膜厚など大きく変化する。 ・薄膜の成長時は島と島が引き合ったまま固体になったり、合体の時に気体が狭まったりして、残留応力が発生する。 ・残留方力は膜厚が薄い場合には「引っ張り」、膜厚が厚い場合には「蒸着」の場合引っ張り、「スパッタ」の場合圧縮になる。エージングにより応力を除ける。 ・エレクトロマイグレーション(EM)は電子の流れに押されて、原子が結晶粒界を移動すること。これにより薄膜配線の断線などにつながることもある。 ・薄膜の残留応力によっても薄膜配線の断線につながることがある。これを「ストレスマイグレーション」と呼ぶこともある。 ・EMを避けるために、アルミに銅を混ぜる技術がある。 ■ アモルファス薄膜 向こう3件くらいの原子配列は秩序が保たれているものの、数十原子のレベルで無秩序な状態であるもの。 太陽電池、パソコンのLCD、コピー機用感光ドラム、センサーなどに利用されている。レーザー光などで多結晶膜にすることができる。 ■ 薄膜生成の希望組成の作成について 合金を成膜する場合、スパッタでは母材と膜の成分が同じなのに対し、蒸着では違う組成になってしまう。 ただし、酸化物のスパッタは成分変化がおきやすく、スパッタ電圧を下げるなどの工夫が必要。 蒸着で合金を成膜するには、合金を粒状にして、一つ一つの粒を瞬間的に蒸発させる方法がある。フラッシュ蒸着法と呼ばれる。 ■ 付着強度を上げるための方法 ・成膜時の温度を上げる ・コンタクトメタルを入れる(基板と薄膜の間に入れることで、付着強度を上げる金属。モリブデン、タングステン、クロム、チタン、鉄など) ・プラズマにさらす(基板表面が負に帯電して、これを中和しようとイオンが流入、このイオンにスパッタされて表面が清浄&活性化&温度上昇する。ボンバード効果と言われる) の上記3点。一般的には蒸着よりもスパッタやイオンプレーティングの方が薄膜強度が高いが、熱処理などにより差をなくすことは可能。 付着強度は基板と薄膜材料の相性によるものと結論づけることも可能。 ■ プラズマ放電が持続する仕組み(2極放電形) 1)陰極側で電子がたまる 2)陰極側の電子が陽極側に飛ぶ途中に、アルゴンなどの気体原子に衝突、原子から電子がたたき出されてイオンとなる。 3)2)で発生した電子は陽極に引かれ、イオンは陰極に引かれて陰極に衝突する。 4)3)により陰極物質が弾き飛ばされ、同時に電子をたたき出す。 5)4)により発生した電子は、1)、2)の役割を果たす。これを繰り返す。 ※真空度が良すぎると2)のイオン数が激減する。この場合、真空の圧力を上げるか、電極間の距離を大きくする(電子の飛行距離を長くする)必要がある。 そのほかに、熱電子放電形(熱陰極で大量に発生した電子が陽極に行く間に、気体分子とぶつかってプラズマを作る)、マグネトロン放電形、無電極放電形(高周波電磁誘導でその内部にプラズマを発生させる)、ECR放電形(マイクロ派でプラズマ発生)などがある。 ■ マグネトロンスパッタ 高真空中でプラズマ放電を持続させるための技術。ターゲットの裏に磁石を置くことで、上記5)の電子をアノード側に飛ばさず、トンネル状に回転させていく方式。電子が長い距離を飛行することで、気体原子とぶつかりやすくして、イオン生成する効率を上げるようにしたもの。マグネット固定式だとエロージョンの場所が決まってしまい、材料に無駄が出てしまうため、マグネットを動かすことでよりスパッタ材をより効率よく使えるようになった。磁場と電場を強くしてあげれば、より高真空でプラズマ放電を起こさせることが可能になった。 ■ ピンホールの原因 パーティクル、ダストが原因のことがほとんど。1立方メートルの中に、0.1μmのダストがどれくらいあるかでクラスが決まる。 クラス1=10個のダスト(1x10の1乗) クラス2=100個のダスト(1x10の2乗) ・・・と、この数え方でクラス8まである。粒子が大きいものは1つでも大きさによって2個、3個などと計算する。 タバコの煙、紙→プラスチック、鉛筆→ボールペン、チャンバー内でも薄膜が剥がれたもの、ポンプが排出する油の小さな粒子なども問題になる。
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