ナンセンスな物語(20)-地球の自然を守れ

 三年前にケニア旅行をした時の話だが、ある国立公園のレストランで、たまたま象の密猟をしている男と同席した。もちろん象牙の販売が目的だ。彼は隠すどころか、自慢げに密猟の話をしていた。

 その話を聞いた時に、私は激しい怒りを覚えた。少し酒に酔った勢いもあったが、「人間が自然を破壊してはいけない!」と大声で叫んでしまった。するとその男は「宇宙人的視点で見れば、人間だって地球の自然のうちに入る。人間の行為も自然現象のうちの一つだ」と言い返した。私はその理論に一瞬納得してしまいそうになったが、「いや、宇宙人がいるという前提ならそうかも知れないが、宇宙人なんかいるわけないだろう」と言ったら、男は「宇宙人がいない証拠はどこにある?」と言い返した。それから、宇宙人がいる、いないの議論で果てしない時間を費やした。

 しばらくするとメインディッシュが出てきた。牛肉のステーキだったが、ふと「野生動物と家畜の命の重さの違い」について考えた。なぜ野生の象を一頭殺すことは問題になるのに、家畜は何千万頭殺しても平気なんだ?これも人間の勝手な解釈ではないだろうか?

 しかし、宇宙人的視点で見れば人間の解釈も自然現象のうちの一つだから、きっとステーキは食べたい時に食べればそれでいいのだろう、という結論で、ようやくステーキを食べ始めることができた。

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