ナンセンスな物語(19)-豚の生姜焼き定食

 ある行きつけの定食屋での話。お昼のメニューに豚の生姜焼き定食を注文したところ、何やら外が騒がしい。この定食屋は雑居ビルの3階にあるが、窓を開けてちょっと外を見てみた。

 すると、正面の大通りに軍隊のような格好をした何万人もの人が手足を完全にそろえて行進している。ブラスバンドが先頭にいて行進曲を演奏しているが、何百メートル後ろの人も、音の遅れなど関係なく、全体に合わせてきっちりと手足をそろえて行進している。

 すっかり行進に見とれてしまったが、30分経っても豚の生姜焼き定食が出てこない。店主を呼んで早く出すよう催促した。

 すると店主は「申し訳ありません」と言った。豚の生姜焼き定食を、外で行進している内の一人に渡してしまったとのこと。外を見るとひとりだけ歩道に座って、豚の生姜焼き定食を美味しそうに食べている人がいる。店主もとんだ間違いをしたものだ。という、それだけの話だ。

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