ナンセンスな物語(18)-花火大会

 全く元気の無いおじいさんが全速力で歩いていたので、シャイな私は突撃インタビューを試みることにした。「ヘイじいさん、今日は何の日か知ってるか?」と、かなり社交的に聞いてみた。「花火大会かもね」とおじいさんは、ちょっとはにかみながら答えた。

 この花火大会の目玉は、世界最大級の線香花火。全員参加の都市型イベントだ。あと、打ち上げ花火の煙が完全に夜空に溶け込んで、全く見えないのも注目すべき点の一つだ。

 一発目の花火が「ドン、ヒュー」という音と共に、空高く舞い上がる。やがてそれは天まで届き、最後に星になった。彼女の夢は「花のように『咲いては散る』のではなく、星のように永遠に輝き続けたいの」ということだったから、本当によかった。心からそう思う。

 やがて花火大会はフィナーレを迎える。最後の一発が夜空のど真ん中で大きくはじけると、ステージの幕がゆっくりと下りていった。観客は総立ちになり、誰ひとり拍手を惜しまなかった。罪深き花火大会に乾杯だ。

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