ナンセンスな物語(4)-オーボエ大工 隣町にオーボエの得意な大工がいる。何でも3年前に楽器屋でオーボエを購入して以来、建築現場で作業中でもオーボエを吹くようになったそうだ。 私も最初にその話を聞いた時には信じられないと耳を疑ったが、友人に連れられてその大工のいる建築現場に直行すると、オーボエを吹く中年の大工が、釘を丁寧かつ正確に打ち続けているのを目の当たりにした。 文字通り、私の目は釘付けになってしまった。クラリネットを吹きながら釘を打つのならまだしも、何故オーボエを吹きながらそんなことができるのか?現場の仕事が終わったのは夕方だったが、私はまばたきするのももったいないと感じるくらい、じっとその芸当とも言える作業を観察し続けた。 家に帰ってからも、その大工のことばかりが頭に浮かんでいた。私だってやればできるんだ、と少し自信を持つようになった。 |