英語が本当に苦手な人の英語学習法

製作: 小川 邦久

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13.スペイン語を英語で学習


 海外旅行での英会話についてはほとんど困ることはなくなりましたが、さらにもう一歩踏み込んでみたいという気持ちも持つようになりました。


 フランス語、スペイン語、イタリア語、ポルトガル語などのラテン語系の国については、比較的英語を話せる人の割合は少なく、ホテルや空港や一部のホテルやレストランなどを除いて、英語が通じないことが多いと言えます。このような国々を自由に旅行するには、やはりある程度現地の言葉の知識が必要になってきます。その中でも私はスペイン語に興味を持っていました。理由としては特に中南米を中心としてスペイン語圏の国が多く、これによって旅の行動範囲が大きく広がるのではないかと期待したからです。



 ロサンゼルス一人旅を手配した時のように、このことを思いついてすぐペルー行きの航空券を手配してしまいました。スペイン語圏の中でも行き先をペルーにした理由は、個人的にナスカの地上絵が見たかったことと、航空運賃も日本から往復で約12万円と、距離の割には割安感があることでした。現地8日間の滞在予定で、最初の2日のみ日本からリマのホテルの予約を入れておきました。電話で予約したのですが、ホテルの人とは普通に英語が話せたので、「現地でもそれほど言葉で困ることはなさそうかな」と思っていました。


 それから、スペイン語の学習を始めました。旅行まではまだ3カ月ほどあります。ただ、ロサンゼルスの時と違って、これだけの勉強量でペラペラになるのは不可能だということは経験的に分かっていたので、「とりあえず、今回は旅行を楽しむ上での知識の足しになれば」程度の考えで臨みました。勉強の教材として選んだのは、英語で書かれたスペイン語の学習本です。わざわざ日本語でなく英語でスペイン語を学習することにしたのは、英語とスペイン語は同じヨーロッパ言語ということで、「日本語よりも英語で説明したものの方が理解しやすそう」と思ったからです(ただ、今ではどちらでもいいような気はしています)。あと、このような形でスペイン語を学習することによって、何となく英語の理解度まで高められるかもしれないという、あまり根拠の無い推測もありました。


 勉強は旅行用会話と文法を中心に行いました。旅行用会話については、挨拶、食べ物、体の名称、数の数え方など、基本的な表現を覚えました。私は暗記があまり得意ではありませんが、数の数え方を覚えるのだけは得意で、ペルー旅行前の学習でも早いうちに10億までの数え方を覚えました。余談ですが、ドイツ語やイタリア語でも比較的短時間の勉強で10億まで数えられるようになりました(ただし、実際に使うことはありません)。


 文法については「旅行に行くだけなのに、なぜ文法を勉強する?その時間で単語を覚えた方がいいのでは?」と言われてしまうかも知れません。しかし、私は大学受験の時にも、大学四年で英語学習を再開した時にも、文法を比較的しっかりと勉強していたこともあってか、スペイン語の文法にも興味を持っていました。特にスペイン語と英語の似ている点と違う点について詳しく知ることで、自分の頭の整理も付きそうな気がしたからです。


 スペイン語と英語が似ている点は、一部の単語のスペルや発音が類似していたり(英語much = スペイン語mucho、英map =スペイン語mapaなど)、動詞や助動詞が文章の前方に置かれることなどです。逆に違う点はスペイン語の名詞には男性・女性があり、冠詞もそれに合わせないといけないこと、あと動詞の変化が非常に複雑ということがあります。名詞の性については、oで終われば男性名詞、aで終われば女性名詞という基本ルール(例外もあります)があるので、理解するのはそれほど難しくありません。ただ、動詞の変化については、非常に多様かつ複雑です。ここでは詳細は省きますが(私が理解しきれていないということもありますが)、英語と比べると数倍もの変化の組み合わせがあって、同じ動詞を使うにしても場面によってどのように使い分けるかなど、習得するのに相当な時間がかかりそうです。さすがに旅行前に全てを理解することは不可能だったので、とりあえずは命令形、現在形と人称の違いを中心に理解するようにしておきました。




 旅行当日、アトランタからリマへ向かう飛行機で知り合ったペルー人のおばさんから「安いホテルがある」と紹介されました。「安いのはいいものの、この人の話をどこまで信用していいのだろう?」と少し迷いましたが、「国際線の飛行機に乗れるような人だから、多分大丈夫だろう」ということで、紹介されたホテルにそのまま行ってみることにしました。そのホテルの料金はもともと予約していたところの半額以下。建物は豪華ではないものの十分立派な作りで、各部屋にテレビやトイレも付いており清潔感もあって申し分ありませんでした。ただ、従業員は英語が全く話せませんでした。いきなりスペイン語を使わなければいけない状況でしたが、私も片言程度は話せるようになっていて、何とかコミュニケーションを取ることができました。従業員にガイドブックを指さして、「ここに行きたい」という事を言ったら、知り合いのツアー会社に電話で連絡してくれて、そこで現地の飛行機や電車や宿の手配をしてくれることになりました。後にタクシーでそのツアー会社に行き、正式に申し込みをしたのですが、そこでは普通に英語で会話することができました。


 私のスペイン語は片言ではありましたが、現地では機会があれば出来るだけ使うように心がけていました。リマのタクシーの運転手と「道路が混んでいる」とか「あと何分で到着」などの簡単な会話をしたりとか、お土産屋で値引き交渉をしたりとか、やはり少しでも現地の言葉で現地の人とコミュニケーションが取れるというのは楽しいものです。そして、何よりもロサンゼルスの時との大きな違いは「オドオド感」が全くなかったことです。スペイン語が全く通じない時にも、あの時のような「分からない、どうしよう、何とかしないと…」という慌てるような感覚はありませんでした。ちゃんと理解されるかどうかは別にして、とりあえず英語で喋ってみたり、英語の単語を適当にスペイン語っぽく変形させてみたり、あとボディーランゲージを入れてみたりもしました。「何とか分かってもらいたい」という気持ちは相手にも伝わるようで、誤解をされたり変な行動をされたりということは一度もありませんでした。「やはりコミュニケーションには気持ちが大切」ということも再認識しました。


 ペルー旅行から3年後にはコスタリカに行くことになり、その時にも旅行前に3カ月ほどスペイン語の学習をしました。片言しか喋れないことには変わりがありませんでしたが、「3年前よりは少しうまくなったかな」という実感はありました。ただ、コスタリカはペルーよりアメリカに近いこともあってか英語の通用度は結構高く、言葉の面ではペルーよりもスムーズに事が運びました。


 日本から中南米に行くには必ずアメリカを経由する必要があるのですが、なぜか中南米からアメリカに戻ってくると、まるで日本に帰ってきたかのような安心感がありました。もちろん、病気や治安などの安全面の違いや、アメリカには既に何度も足を運んでいるということもあるとは思います。ただ、それに加えて「スペイン語よりはまだ英語の方が理解できる」ということもかなり大きな理由であると言えます。英語にさらなる親近感を持てるようになったという意味でも、スペイン語を勉強した甲斐があったというものです。


 スペイン語については、ペルー旅行前とコスタリカ旅行前の合計6カ月程度しか学習していません。しかも英語学習をし始めた時と違って、会社が終わった後の通勤電車など、忙しい時間の合間を縫っての比較的短時間の勉強でした。まだまだ「スペイン語で会話できる」と言い切れるレベルではないですが、片言ではあっても旅行に十分使える位になったことには大変満足しています。でも、「将来時間ができたらスペイン語の学習をもっと進めたい」という気持ちも少なからずあります。